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『スプリング』本文サンプル(徐孔冒頭)

本文が、短編(徐孔)+短編(司馬諸)+短編(姜孔)なので、いつものサンプル文より短めです

六畳一間の男のワンルームに変化が訪れたのは、大学三年になる年の春だった。二つ年下の幼なじみの孔明と、この部屋で同居することになった。
孔明は推薦入試で、年を越す前にはもううちの学校に入ることが決まっていた。その知らせを聞いて、学内でばったり会ったらどんな顔をしたものかと、嬉しさと懐かしさで頬が緩んだものである。
ところがそんな時、一本の電話がかかってきた。


「徐君。孔明が、君と同居したいと言っている」


電話口で、初めて孔明の兄からその話を聞いた時は、口癖の「ええと…、」すら出ないほどに驚いた。

「もちろん、徐君が『迷惑』であるというのだったら、喜んで私は孔明に、君との同居は止めるよう説得するのですが!」

今にも人を呪い殺さんとしそうなどすの利いた声が、『迷惑』の部分をものすごく強調しながらそう続けてきたが、「ええと…、別にかまいませんよ」と自分の気持ちを正直に告げた。迷惑だなんて気持ちは微塵も無い。むしろ楽しみなくらいである。
すると電話の向こうからは「そう、ですか……」とすっかり意気消沈した声が返ってきた。


そして、まだ三月も半ばなのだが、孔明は早速住み着く気満々で、着替えと最低限の身の回りの物を詰めたキャリーケース一つ持ってアパートへやって来た。

《続》

表紙↓

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