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『窓際の席の隣は一人しかいないんですよ?』本文サンプル

大徳工業パロ徐孔です。(勝手に)徐庶さんは孔明と同じクラスです。同じく勝手に大徳工業は寮制です。この少し後には濡れ場になります。


照りつける日差しのまだまだ厳しい残暑。重陽の節句も過ぎたというのに、夕方でもその光線は弱まる兆しを見せない。ジワジワと鳴く虫の声が暑さを余計に煽る。虫刺されを防ぐため着た長袖のジャージで、徐庶は額から吹き出す汗を拭った。
(せめてこの一角だけは終わらせていきたいな……)
立ちあがって見渡せば、目の前に広がるのは草原と見紛うばかりにうっそうと茂った雑草。残暑とはいえ、さすが仮にも生命力溢れる夏なだけあって、年中元気な雑草もこの時期もまだ青々と力強い。根もしっかりとしていそうで、疲れが腰にくることは受け合いだ。
やれやれ、と諦めをこぼしながら徐庶はまたその場にしゃがみ込み作業に打ち込む。と、ほどなくして、後ろから此方に近付くひとつの足音が聞こえてきた。ほのかに響く土を踏みしめる音。こんなところに来るなら、革靴はやめた方がいいと思うのだが……。
「――――奉仕作業お疲れ様です」
翡翠の転がるような声。爽やかなその声音を聞いただけで、幾分暑さが和らいだような気がする。
「いや、あともう少し……ここを全部むしったら終わるよ」
しゃがんだ体勢のまま首だけで振り向くとそこには、夏の薄い制服を身に纏った可愛い恋人、孔明が立っていた。未だ結構暑いというのに、その白磁の肌はさらりと汗ひとつ見せていない。
「ここ全部」と徐庶が草刈り鎌で指し示した先を眺め、孔明は眉根を寄せた。
「結構ありますね。手伝いますか?」
「ん?大丈夫、すぐに終わるよ。…そうだな、用具室のところが日陰になってるはずだから、そこでちょっと待っててくれないか?」
ちゃっちゃと片付けるからさ、と告げると、少し逡巡の表情を見せた後、「わかりました」という返事をしてきた。言葉をそのまま受け取れば素直に聞こえるが、実際はしぶしぶ感が大いに伝わってくる。しかしそのたおやかな手を土にまみれさせるのも如何なものかと思うし(孔明本人は、土いじりは得意だと言うが、あのささくれひとつ無い手にもしも傷ができたらと思うとどうも忍びない)、それにこれは自分に課せられたことなのだから、孔明に手伝わせるわけにもいかないだろう。
そんなことを考えていると「早くしないと私もやりますからね」と声がかけられた。これはあまり待たせたらヘソを曲げられるな、と、徐庶は雑草をむしる手を早くした。


《続》

表紙↓

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