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第五話 諸将 不埒な気持ちで孔明と温泉旅行に行くに 劉備 ストーキングに精を出すも悉く阻まれる(後編)

~前回までのあらすじ~
ヨコシマな将と孔明は皆で南蛮温泉旅行の途上。途中で泊った城で孔明が謎の不埒者に貞操を奪われそうになる危機にも遭遇したけど(※未遂で終了)、姜維の活躍により見事撃退。とりあえずここからは船に乗って早いとこ南蛮に行って温泉に入ろう!と心に決めて、一行は遂に南蛮の地に到着(詳しくは「カボチャな~」の第五話を参照してください)。
というわけで本編です。※下ネタ注意※

舟に揺られるほど幾時か。曹丕一行は無事南蛮の地をその足で踏みしめた。蒸し暑い気候や巨大な植物が、ここが本拠地会稽からは程遠い土地であることを示している。曹丕のそばに立つ孔明も珍しく額に汗を滲ませながら空を仰ぎ見た。

「思っていたよりも暑い所ですね。上着を脱いでしまいたいくらいです」

冗談を含ませて孔明は曹丕の方に笑いかけた。曹丕は「それなら遠慮なく脱いでしまえ」とでも言おうかと思ったが、まァ上着と言わずこの後は温泉でその先までじっくり見られるのかと思うと、ひとまずがっつくのは止めておこうと思い、「早く汗を流したいな」と答えておいた。
「それより、うまく撒けたでしょうかね?」
二人の話に割り込んできたのは趙雲。
「我らですらこんなに来づらい所だとは思わなかったのだ。向こうは一人。来るにも来れんだろう」
宿舎で孔明を襲った謎の影。これだけ無双武将が溢れているところにやってくるとはかなり太い奴だとは思っていたが、まさかこんな僻地まで追って来るまい。
「丞相、必ずや私が、丞相を魔の手から守ってみせます!」
そう言って胸を張るのは姜維。先の変態襲撃事件の最大の功労者だ。あの時姜維が孔明の護衛についていなかったら、間違いなく孔明の純潔は奪われていただろう。
「頼りにしていますよ、姜維」
「はい!」
「――――では孔明、温泉へ行くぞ」
すっと手を差し出す曹丕。その手のひらに手を重ねて、孔明は柔らかな笑みをこぼした。




一方その頃。曹丕一行の後方二里の位置。
「――――何とか追いつくことができたな‥」
葦毛の凶馬に跨った大耳腕長の男、自称孔明の運命の相手、実際は孔明のストーカー劉備玄徳その人である。彼もまた孔明と同じ南蛮の大地をその両足で踏みしめていた。
孔明のビームに吹っ飛ばされ、船に密航することもできず大幅な遅れをとってしまった劉備であったが、そこは民に大人気の不思議なオーラを纏う庶民派大徳のことである。悠久の大河を目の前に佇んでいると漁師が現れ、そこにおられるあなた様はもしや高貴なお方では?拙い船ですがどうぞお乗りになってくだせェと遠慮しても乗せられてしまう。適当な所で下ろしてもらえば今度は泳ぎの上手い的廬馬(5仕様)が劉備を孔明の元に連れて行ってくれる。そして現在、孔明たちに気づかれにくく、かつなかなか見失わない距離から孔明のストーキングを続いている。
さてどうやら孔明たちはここからさらに、今度は徒歩で移動する模様。こんなに大きな耳を生やしておきながら聞こえる音は人並みなのでどこに向かうのかはわからない。そういえば孔明が城を出たのをこれ幸いとツケてきたが、何が目的の遠旅かは全く知らないぞ。これ以上奥地に進むというのか、孔明たちは探検隊として珍獣でも探しに来たのだろうか?
しかしひとまずは置いていかれないことだろうと、劉備は息を潜めて尾行を再開した。

一方、劉備の動向を、というか孔明を狙っていたのがどこの張三李四なのかすら分からない曹丕一行は。南蛮の奥地に新設した日本風温泉建築の前まで来ていた。
「オロチの時に三成から聞いたんだ。」
気に入ったか?と孔明の肩に手を回しながら微笑む曹丕。

ちなみにこのエンパは無双4の時のなだが、オロチとか5仕様とか、ギャグ故に最早何でもありの世界と化しているのを気にしてはいけない。

閑話休題。孔明は、曹丕の不敵でぎこちない笑みとは全く異なる、涼やかで可憐な笑みを浮かべると「素敵な佇まいだと思います」と答えた。孔明が満足しているのかと思えば、曹丕は鼻高々だ。
「ところで孔明。先も言ったが、ここは日本風に出来ている。故に‥」
「日本式の湯浴みの仕方は心得ております。ご安心を」
「そ、そうか‥。ならば、いいのだが」
ごくり、と曹丕の喉が鳴った。

(我が大望、叶ったり!!)

心の中で思わずガッツポーズをせずにはいられない。そうである、わざわざ曹丕が南蛮の奥地に、慣れない日本式の風呂を建造した理由はたったひとつ!
孔明の肌が見たい!
ただその欲望のためである。そもそも孔明は肌見せが極端に少ない。毎回基本的に顔と首を除けば手首から先しか露出していない。しかも5では手袋までも着用してしまったために隙という隙がまったく生まれていない現実がある。故に、孔明の肌を見るということは大変貴重なことなのである。ある者は孔明の肌を見ることよりも「真珠を捕るが易く、仙人に会うが易く、蓬莱山に行くが易し。甚だ見え難きは孔明の肌のみ」という迷言を残したらしい。それほどまでに孔明のガードはまさに鉄壁なのである。曹仁顔負けの鉄壁さだろう。
しかし、オロチで友人に聞いたところによると、日本式の湯浴みというのは服を着用せずに皆で湯の中に入るのだという。風呂といえば一人で、が一般的な我々にとっては寝耳に水、いや雷に打たれるくらい衝撃的なことだった。特にその仕組みは温泉というシステムの時の最も発動するのだとか。その仕組みを利用すれば孔明の生肌を拝むことができるではないか、というわけである。しかも国土を調べてみると南蛮の地に調度良いものが見つかったのだから、これは作らぬわけにはいくまい。

「では孔明。私は先に入る故、後からゆるりと来るがよい」
「後から‥ですか?」
「そうだ」
何だか孔明は腑に落ちないといった表情をしていたが、主の指示ということでひとまず了承したようだ。孔明には少し可哀想な気はするが、ここは譲ることはできない。先に風呂に入っていれば、後から来た孔明の裸体をごく自然に観察できるからだ。曹丕が家屋まで歩き出すと周瑜や趙雲や陸遜も急に威勢良く「お供します!」とか言い出した。目的は、恐らく曹丕と同じだろう。
結局孔明と共に後発組に残ったのは、「私はどこまでも丞相と共に!」と言う姜維だけだった。
「姜維は日本式のお風呂に入ったことは?」
「いえ、ありません。我々の考える風呂と、どのような違いがあるのですか?」
とりあえず孔明たちは時間潰しに風呂談義を始めていた。



一方の曹丕率いる先陣。
「ふむ‥。なかなか良い作りだな。」
設計したのは誰だったか、あとで褒美を取らせようと曹丕は満足そうに呟いた。高貴に香り立つ日本産桧の脱衣場の先には、天然の岩を利用した景観溢れる露天風呂。泉質は薄い乳白色で、曹丕が浸かってみたところ下にいくほど白は濃くなっているようだ。そして露天故に名前も知らない花が一片一片ひらひらと湯の上に舞い降りる。花と孔明とは、さぞや美しいものに違いないと妄想する曹丕。湯に隠されている曹丕の息子は少し元気になっている。

『素敵なところですね我が君』
同じ湯に浸かる孔明がそう告げる。
『お前のために建てたのだ孔明』
そう耳元で囁くと孔明は目を丸くした。
『私のために‥?そんなに、私のことを想っていてくださるなんて‥‥。我が君、私は三国一の幸せ者です』
『フ。三国一とは大げさだな』
『でも本当に嬉しいのです。どんなお礼をしたら良いか‥』
『気にすることは無い、孔明。お前はこれから、私の生涯の伴侶になるのだからな』
『我が君‥』
『孔明、これからは字で呼んでくれ』
『はい、‥子桓様』
『孔明‥』
『子桓様‥あっ』
『愛してる、孔明』
『あ、私も‥愛してます。子桓様っ、ひぁっ‥!』

(――――フ、初めてなのか孔明?ならば私が全部教えてやろう)
最早曹丕の妄想もフルスロットルであるが、君主と同じく早々と温泉に陣取る残りのメンバーもやはり似たようなことを妄想していた。湯の色が濁っていて本当に良かったものだ。
と、そうこうしているうちに脱衣場がまた賑やかになってきた。どうやらついに孔明がやってきたようだ。よくよく思いかえせば姜維が孔明と共に残っていたような気がする。奴がうるさいのだろう。

『姜維?うずくまって、どうかしましたか?具合が悪いのですか?』
『い、いいえ!そんなことはありません!ただその‥立つに立てないというか‥いや勃ってるから立てないというか‥と、とにかく私のことは大丈夫ですから丞相はどうぞ先に湯殿へ!』

どうやら姜維の奴は孔明の肌を見てついおっ勃ててしまったようだ。そんなことではまだまだ私の敵ではないな、と自分の下半身のことはさておき曹丕は心の中で嘲った。
と、軽い音を発てて脱衣場と風呂をつなぐ扉が開いた。そこに立っていたのは、タオルを一枚腰に巻いただけの孔明。真珠のように真っ白な玉の肌を惜しげもなく露出し、豊かな黒髪は団子にして頭に載せ、普段は決して見えない滑らかなうなじをさらけ出した孔明。唯一孔明を守るのは腰に巻いたたった一枚の布だけ。思わず挟まれたいような太股も、すっきりとした上腕も、きゅっとくびれた細い腰も全て露わになっている。淡い桃色をした胸の小さな突起も、外気に触れたせいかつんと少し尖った姿で人目に晒されていた。
そんな孔明が、にっこりと笑みを携えて、ぱたぱたと此方に歩み寄って来た。
「我が君‥!」



「「「バスタオルを巻け!孔明!!」」




子犬のように無邪気に此方にやって来る孔明に理性が危険信号をあげ、つい声を荒げて叫んでしまった。しかも同じように叫んだのはこの場にいたほぼ全員だったようで、その言葉に訳が分からず目を丸くしている孔明を総出で「そんな小さなタオルではなくてバスタオルでも巻いてこい!」と脱衣場まで追い立てた。


ピシャリと脱衣場と風呂を結ぶ扉が閉まった時に、誰からともなくため息が漏れた。
「――――皆さん、勿体ないことをするんですね。せっかく諸葛亮先生の裸体を見られるチャンスだったのに」
背後からの声に全員が目をつり上げ振り向いた。
「言われなくてもチャンスだと思っていたわ」
「では何故追い返してしまわれたのですか?腰にタオル一枚で、真っ白な肌をあんなに露わに‥あぁきっとさぞかし触り心地は良いのでしょうね、それに淡いピンク色の乳首がまた欲情を掻き立てるといいますか」
うっとりと陸遜が語るのをなるべく聞かないように、孔明の裸体を思い出さないように、曹丕達は必死である。
「‥‥私たちはまだ、孔明の前では紳士であり続けたいのだ」
陸遜を除く一同が激しく頷いた。孔明の肌が拝みたい!その一心からの温泉旅行であったが、これは大きな誤算であった。

(孔明の裸体のなんと艶やかなこと…!)

やはり妄想は妄想ということだろうか、実際の孔明の肌は妄想よりも色白で、触るとぷるんとしそうな弾力が目に見えて、すらりと伸びた脚が捕まえたい衝動に駆られるほどしなやかで、乳首は思っていた通り控え目で可愛らしい色をしていたが、百合のような白の肌とのコントラストはまた艶めかしさを際立たせているとしか言いようがなかった。
そんな光景を見たら素直な息子がみるみるうちに起き上がってきてしまうのなんの。このままではこの身の破滅だ。そんな姿を孔明に見られようものなら、嫌われるのは目に見えている。陸遜ほど開き直れるような性格ではないのだ。
すると、脱衣場と風呂をつなぐ扉がするすると開いた。
孔明か?!と思いきや、現れたのは姜維。二進も三進もいかない状態はどうやら乗り越えられたらしい。
「――――姜維、やっぱりこれは違うのではないですか?」
姜維のさらに奥から戸惑いを含んだ声が発せられた。いいえ丞相、大丈夫です、問題ありません!と、姜維が孔明を説得している。そしてついに扉の向こうから、恥ずかしさを隠すようにやや俯きながら、バスタオルで胸から膝上までを隠した孔明が現れた。
「わ、我が君‥あの、腰にバスタオルを巻こうとしましたら、姜維が‥、その、このような巻き方の方が良いと申してきたのでこんな姿なのですが‥えっと、‥まるで女性のようでおかしいですよね?」
もじもじと戸惑いながら上目遣いに聞いてきた。そんなこと、答えは決まっている。
「おかしいわけないだろう、孔明。その方がいい」
私の理性の限度からいえば。とは心の中でだけ付け足しておく。しかし孔明は不満そうに頬を膨らませ「さようでございますか」とそっぽを向いてしまった。誉めたはずなのに不思議だと思ったが、とりあえず機嫌を損ねるわけにはいかない。


「では孔明。背中流しっこでもするか」
「「「なっ‥!!?」」」
その言葉に孔明よりも先にギャラリーが声をあげた。
しかしそんな周りの奴らの様子には気づかないのか孔明は、機嫌はともかくとして、素直に「はい」と返事をした。悔しそうな外野の面々。曹丕はこれでもかというくらいのどや顔で悠然と湯船を出、わくわくしながら孔明のそばに座った。君主やっていて良かったと心の底から思う瞬間だ。
「それでは、お背中を流させていただきます」
と、孔明が湯桶を手にしようとした時、ちょっと待った!とその動きを阻止する輩が出てきた。振り向かなくても声でわかる。周瑜だ。ざぶりと湯船から出るといけしゃあしゃあと孔明に接近してきた。
「一つ提案があるんだがな孔明。殿の背を流す君の背を、私が流してあげるっていうのはどうだい?」
ぴくり、と曹丕の額に青筋が浮かぶ。いや、曹丕だけでなく周瑜を除く他の攻一同、一様に怒りを覚えていた。
孔明におさわりしたいのが見え見えである。別に露骨に孔明にアタックしてはいけないわけではないが(むしろ少々強引にいかねば孔明に気づいてもらえない可能性が濃厚だ)、これは明らなるセクハラだ。むしろセクハラ以外の何でもない‥。
「いいですよ。ではお願いします」
「「「何ィィ??!」」」
南蛮の大自然に盛大にこだまする野太い叫び。
みんなで大声でハモってしまったが、今はそんなこと気にしている場合ではない。
「‥いかん!いかんぞ孔明!周瑜に背中を流してもらうなんて、言語道断だ!」
何としても周瑜による孔明おさわりを阻止せねばと君主を筆頭に孔明を慕う輩が次々に声を荒げた。
「何をされるかわかったものではありませんよ?!」
「そうですよ!自主規制が無いとこの場ではとてもお見せできないことが起こるかもしれません!」
「何もよりによって周瑜は危険だぞ」
「そうです!丞相、その役目是非ともこの姜維にお申し付けを!」
「抜け駆けなんてさせませんよ!諸葛亮先生、どうぞ一番弟子のこの私に‥!」

ぎゃいのぎゃいのと言い争いは続く。誰が一番弟子ですか!周瑜よりも貴様の方が危険だ!そう言って貴方のほうこそ孔明殿に何をする気ですか!
「もう!皆さん何でそんなことを言うのですか!?」
凛とした孔明の声が雑音を切り裂いた。珍しく孔明は声を荒げ、先ほど騒ぎ立てていた面々一人ずつに厳しい視線を送った。周瑜殿の何がいけないんですか?周瑜殿はよかれと思って声をかけてくださったのですよ?
「他人を思いやる心あってこその発言が、そのように無碍にされるとは由々しき事態です」
先ほど猛反発を繰り返していた面々を強い眼差しで射抜く孔明。
いや、周瑜にあるのは思いやりじゃなくて下心で、そんなヨコシマな奴が孔明の肌に触れることの方が由々しき事態だと思われるが‥とは心の中でしか言えない面々(へたれ)。
「よって最初に提案してくださった思いをすげなくしないためにも、私の背中流しの件は是非とも周瑜殿にお頼み申し上げます。私から依頼した、ということでしたら皆さん文句はないでしょう?」
そう言って椅子に座ると、それでは我が君、改めてお背中流させていただきます。
「私の背中は頼みましたよ周瑜殿」
「よし任された!」
と何とも楽しそうな会話が繰り広げられている。周瑜のセクハラを阻止しようとした結果がまさか此方の心証を悪くすることになろうとは、孔明に恋する難しさである。孔明におさわりができる周瑜のデレデレした顔がまた此方の神経を逆撫でる。
曹丕も努めて平静を保とうとしたが、内心は周瑜にはらわたが煮え繰りかえるほどの怒りが込み上げていた。しかしそんな曹丕をよそに孔明は手桶に温泉を汲むと、丁寧に曹丕の背中を流し始めた。心地よい温度が怒りを押し流してくれるようで、曹丕は徐々に平静を取り戻していった。そのうちに背をほわほわとした泡が覆い始め、「お痒い所はありませんか?」と甲斐甲斐しい孔明の声が聞こえてきた。
「大事ない。良いぞ、孔明」
肩越しに振り向いて労いの言葉をかければ、はにかんだような孔明の表情を見られた。が、恥ずかしいのか孔明は顔を見られないように曹丕の背に隠れてしまった。何と初々しく可愛らしいことだろう。
(背中を流してもらえるだけで十分幸せじゃないか、これ以上一体何を望もうというのだ‥!)
強いていえば前も洗ってほしいとかだが流石にセクハラだと思われるだろうと考えていたその時、
「――っひあ!?」
曹丕の後ろから甲高い悲鳴が上がった。その声の主は勿論孔明。
「な、何ですか?周瑜殿‥ひゃあっ!」
「何って、身体を洗ってあげてるんじゃないか」
「そうではなくて、どうして素手なんですか?!タオルは!?ふふ…くすぐったいです‥!」
慌てて曹丕が後ろを振り返ると何と周瑜が、バスタオルを外して無防備になっていた孔明のその可憐な乳首を厭らしい手つきで触っているではないか!
今すぐにでも孔明を助けねば!そうは思うもののしかし先ほどの孔明のあられもない悲鳴で下半身がキてしまっていて立つに立てない!
しかしそうこうしてる間も周瑜のセクハラは止まらない、乳首の次は何と白くて実に滑らかそうな内股に手を延ばしていた。
「周瑜殿‥っ!そこは、後で自分で洗いますから‥」
「いやいや、折角だから一度くらい洗われてみたらイイだろう?」
あわや周瑜の手が孔明の清廉な太ももに触れようとしたその時!
スパーン!と威勢のいい音がその場に響いた。何が起きたのかといえば、何と今まで事態を静観していた馬超がやおら動き出し、濡らしたタオルで思い切り周瑜をひっぱたいたのだ。
「周瑜、セクハラもいい加減にしろ」
ぎろり、と国一番の猛将馬超がひと睨みすればヨコシマが原動力のような周瑜もさすがにたじろいだ。
「‥‥だからと言ってタオルで殴ることは無いだろ」
「お前は言っても聞かんだろう。――――大丈夫か、孔明」
「は、‥はい。大丈夫ですが‥あの‥、」
頬をほんのり朱に染め、言いどもる孔明。もじもじと少し言いづらそうに、言うか言うまいか逡巡しているようなその姿。その様はとても可憐であるが、馬超に恋する街娘の様子に酷似して見え――。
まさか孔明そんな!と曹丕達が絶叫しそうになったその時。意を決した孔明が遂に覚悟を決めた。
「ま、前を隠していただけませんか?その‥、目のやり場に困るのですが‥‥」
まさに姫を助ける白銀の獅子のように颯爽と現れた馬超であったが、腰に巻いていたタオルで周瑜をぶん殴ったため只今馬超の錦馬超が孔明の目の前にご開帳状態であった。
同じ性で同じモノが付いているとはいえ、清楚で慎ましい孔明には恥ずかしくて仕方ないのだろう。目を伏せて困ったように俯いてしまっている。
「私より貴様の行動の方がよっぽどセクハラっぽいじゃないか!!!孔明になんてもの見せてくれるんだ!!」
「事故だ」
ぎゃいぎゃいと互いにセクハラ容疑がかけられた周瑜と馬超が喧嘩を開始する中、ささっと曹丕は孔明を保護し、すかさず風呂へといざなった。二人の喧嘩に後ろ髪引かれる孔明であったが、「冷えたらやめるだろう」と宥めて連れて行く。
「――――おいで、孔明」
先に湯に入り孔明を呼び込むと、はにかみながら孔明はそのほっそりとした片足をそっと湯に入れてきた。あったかい、と言いながら浮かぶとろけるような笑みを見ると、知らず胸がじんと熱くときめいてしまう。
「あ、タオル外さないと‥」
「!外さなくていい!そのまま入ってかまわん!」
「でもマナーは‥」
「君主命令だ!!!」


さて浴室が孔明を中心に不純に満ち溢れた攻めズがてんやわんやしている中、一方変わって脱衣場では。浴室の人々に気付かれないよう息を潜めてこっそり進軍している男が一人。お忘れの方もおられるかもしれないその男こそ姓は劉、名は備、字は玄徳その人である。カモフラージュのつもりか籐の籠を頭にかぶり抜き足差し足、音を立てぬよう滑るように足を運んでいる。そしてひとつひとつ籠の中身をチェックしては違う違うと首を振るという奇行を繰り返している。
(こう籠が多くては‥一体どれが孔明の籠なんだ?)
そう思いながら劉備はまだまだ数多く残る籠の列を眺めた。そうである、何を隠そう劉備は入浴中の孔明の衣服を盗みにきたのだ。しかも、劉備が狙っているのは孔明の使用済みの衣服である。
説明しよう、劉備は曹丕の国の将ではない。いわゆる在野の将である。そのために君主を筆頭に国の臣に守られ城の奥の奥にいる孔明と接触することは普段極めて稀なのだ(領内視察の時は孔明が見られるが必ず下心のある男が一緒にいるのが不快であるらしい)。そして右手を孔明と思い暮らすこと幾星霜。しかしいくら思い込んだところで右手は己が右手であり、孔明ではない。最近はなんだかマンネリ化してきてしまったとも思っている。そこで、もし孔明の使用済みの衣服や下着があればここで拝借‥というかお持ち帰りできれば夜の一人遊びもだいぶテンションが上がってくるのではないかと推測して使用済み衣服の窃盗を試みている真っ最中なのであった。
しかし探せど探せど、籠から見つかるのはどれもこれも汗臭い小汚い服ばかり。孔明の使用済み衣服の入った籠であればフローラルなこの世の聖域と例えても差し障りないような清らかな香り漂うはずである。しかしそれが見つからないとはどういうことであろうと、劉備が首を捻った瞬間。トン、と背中に何かぶつかってくる感触を感じた。そう、大きさとしてはおよそ自分と同じ『ヒト』のようなその感触……。
バッと後ろを振り向くとそこにいたのは浅黒く日焼けした、腰にタオル一枚だけ巻いた青年。劉備と時を同じくして振り向いたであろう驚きで目を見開く青年の腕にはフレグランスな香り爽やかな、白っぽい衣装の入った籠が。
「き、貴様!それはひょっとして孔明の!?」
「貴方の方こそなんですか?ここは国の私有浴場ですよ。……まさか、先日から私の諸葛亮先生を付け回しているストーカーですか?」
「いつ孔明がお前のものになった!ち、違うぞ!私は決して怪しい者ではなく、中山靖王劉勝の…いやそれより!何故お前は孔明の衣装を持って行こうとしているのだ?!」
「不法侵入者に答える義理はありません。しかし強いて言うならオカズに使おうと」
「お前の方が十分タチが悪いじゃないか!」
思わず劉備が怒鳴ってしまった次の瞬間。扉の向こうがざわざわと騒がしくなってきた。「脱衣場が騒がしくないか」と誰かの声が聞こえ、此方へ向かう足音も近付いてきた。さりげなく使用済み衣装を頂戴するつもりだったが、もはやそれは不可能だろう。しかし。すぐ目の前に使用済み衣装があるのである。もう手を伸ばせばすぐそこに。
考えるな、感じろ。どこかで聞いたことのある格言らしきものが頭をよぎる。
その刹那劉備はガバッと青年の抱える籠から衣服のみを掴み取るや、青年にリアクションを取る間も与えず、まさに弾丸のような速さで家屋を脱出した。そして戸口の前で大人しく主人を待っていた的蘆馬にひらりと軽やかに跨るや、全速力で南蛮からの逃亡を図った。腕の中には芳しい香りのする孔明の衣装を抱えながら。
(やった…!私はやったぞ…!)




同じ時。例の温泉。
ふと孔明が、陸遜がいないと気付いたところで、脱衣場の方が妙に騒がしくなっていることに馬超が気付いた。不審に思った曹丕が自ら先頭きって脱衣場まで赴くと、不自然に籠を抱えた陸遜を発見した。何があったのかを問い詰めるとどうも先日の孔明のストーカーが現れたのだという。そしてなんとその不審者は孔明の服をせしめていったというではないか。
「……貴様、よくもそんな変態に孔明の服を持っていかせたな」
自分ですら持っていない…もとい、本当は自分も欲しい……ではなくて、孔明の所有物である私服を持ち去るなぞ言語道断非道の行い、天誅に値する大罪であるが、それを守りきれなかった陸遜にも罪はある。曹丕は地獄の閻魔も見よやとばかりに怒り心頭していたが、「お待ちください」と涼やかな声が間に入ってきた。陸遜殿、少々籠を見せていただけますかと籠を受け取る孔明。籠の隅々を見て、姜維にもそれを見せると、二人で何やら納得したような表情をしている。
「我が君、賊が盗んでいった物は偽物です」
は?と思わず、曹丕以下事件発生現場に駆けつけた面々は呆気にとられてしまった。実は、と孔明は続ける。
「月英が、いざ脱衣場に着いたらこの錦の袋を開けるようにと言っておりまして」
月英の!錦の袋!!
そう、それはこの旅行中、諸将にとって最も恐るべき物になりつつあった物である。
「袋の中には紙が一枚と、小瓶が一つ入っていました」
月英曰く、『衣服を脱ぎましたら絶対にお一人で籠を使われてはいけません。必ず姜維と同じ籠に、姜維の衣服で上から隠すようになさってください。そして別の籠に白い布でも入れて、同封の香水で香りを付けるようにしてください』と。すると孔明は姜維の衣服が入った籠からいつもの、白を基調とした清楚な衣装が姿を現した。芳しい孔明の匂いが鼻をくすぐる。
「こちらが本物の私の服です。」
流石月英ですね、と。にこり、と満足そうな笑みを浮かべる孔明。湯上りの火照った顔と少し潤んだ瞳での極上の笑みに、諸将は思わず頬が緩みきってしまいそうだったが、一部の将を除きほとんどの将は気合いで顔を引き締めた。
しかしこの月英の慧眼には、不埒な諸将もまさに感服の極みであった。いやでも待てよ。と声を上げたのは誰だったか。月英殿が想定していたのは本当にあのストーカーだったのだろうか、と。少なくともあのストーカーの存在が明らかになったのはこの旅の道中のことである。つまり月英が当初、罠を想定していた相手は別にいたのではないか。ふと諸将の頭に浮かぶのは一番先にこの脱衣場で籠を抱えていた男。
「……陸遜」
地を這うような低い曹丕の声が脱衣場に響く。その後、陸遜がどうなったのかは想像に難くないだろう。しかし最後には「こうなったら放逐だ!」と息巻く曹丕を孔明がどうにか宥めて、陸遜解雇を思いとどまらせたのである。


《終》

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