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一日恋人デート

マサヤ様へ29000打キリリク。瑜諸。諸葛さんが大変不本意ながら都督とデートすることになってしまいました。




早朝。陽の光にほどよく照らされた大地はほのかな暖かみを持ち、全天に雲は無い。誰がどう見ても明らかなる快晴。真夏ではないので、散歩をするにはうってつけの天気だろう。
しかしそんな天気とは裏腹に孔明の気分はどんよりと、今しもぼたん雪でも降りだしそうなほど薄暗く曇った空が似合いそうなほど重かった。
というのはこれから一日のことを思うともうどんどん頭が痛くなっていって、いっそ本当に風邪で頭が重いのであればどれほど楽かと思うほど。しかし約束は約束として守らねばならないだろうと孔明は鉛のように重い足を引きずりながら約束の場所へと向かって行った。


《一日恋人デート》


「遅かったじゃないか、孔明」
約束の城門脇に行くと、そこには満面の笑みを湛えた周瑜が待っていた。セリフの割に全く怒っていないのが容易に推測できる。
「申し訳ありません周瑜殿。少々支度に手間取ってしまいました」
本当はあまりにも来たくなくて暫く葛藤していたとは言わなくてもいいだろうと孔明は心の中で呟いた。周瑜はそんな孔明に溢れんばかり愛しさを込めた視線を送った。
「初めてのデートだからな。支度に手間取っても仕方ないことさ」
デート。その響きを聞いた瞬間に孔明は己の身体中にぞわりと鳥肌が立ったのを感じた。そうだ、今から一日、デートをしなければならないのだ。と孔明が息を飲んでいるが気にせず周瑜は「それと、」と付け足す。

「せっかくのデートなのだから周瑜殿ではなくて公瑾と呼んでくれないか?」

がくり、と孔明は思わず崩れ落ちそうになったがどうにか耐え、震える声を抑えながら「わかりました‥こ、公瑾」と呟いた。すると周瑜は大満足の笑顔で「では行こうか、孔明」と孔明の手を引いた。
(あぁ‥、何故こんなことに‥‥)
と孔明は鼻の奥がツンとするのを感じた。


事の起こりは一週間前の酒宴の席。孔明はあまり飲めない体質なのだが何故かこの日に限ってしこたま酒を飲んでしまった。その時なのだと、後から人に聞いた。周瑜と色々喋り込んだ最後に、紙に何か書いたのだ。そしてその紙を見せられたのがその翌々日。その紙には、「周瑜殿、今度の休みにデートに行きましょう。孔明」と書いてあったのだ。しかも余程酔っていたのか名前の最後にハートマークまで書いてある始末。頭を抱えながら「覚えていないのです」と言うと周瑜は「酒の席での約束は反古にするというのか」となじってくる。そして仕方なく約束通りデートをするということになった次第なのである。


しかしその後になって孔明はそもそもデートとは何なのかというこの件の全く根本の所にぶち当たった。が、古今の著をいくら紐解いてもわからなかったその言葉は、ふと聞いてみたその人により定義されることとなった。
「デートとは恋人同士が仲睦まじく一日を過ごすことです」
さらりと月英はそう言いきった。あっさりと出た答えに驚きもしたが何よりも孔明を驚愕させたのは『恋人同士が仲睦まじく一日を』というところであった。つまりはデートとはそもそも恋人であることが前提の行事なのではないか。ということは周瑜と別に恋仲でも何でもない只の同僚なのだからデートはできないではないか。と、孔明はそう解釈したのである。

なので先に孔明は「確かに約束はしましたが、恋人ではないのでデートはできません」と周瑜に伝えに行った。これで終わったと孔明は確信した。が、しかし周瑜はあろうことか「ならその日一日だけでも恋人気分で楽しもうじゃないか」と言ってきたのだ。さらには「ひょっとして初めてのデートかい?」と出来ることなら知られたくなかったことまでバレてしまった。
孔明はどうしようもない絶望感に包み込まれた。その絶望感は例えるなら次期君主がどうしようもないアンポンタンで、物事の本質もわかっていないのに「余は魏に降る~」とか言い出すものよりもはるかに大きな絶望感である。

冷静になればどうしてあれほど飲んでしまったのだろうと悔やまれてならない。



「さァおいで、孔明」
周瑜の言葉に孔明はハッと我に返った。先ほどまで手を引かれていると思っていたが、今周瑜は馬に跨がり此方に向けて手を伸ばしている。まさかと思い孔明は恐る恐る震える唇で言葉をつむいだ。
「それは‥一緒に乗ろう、と‥?」
すると周瑜は柔らかい微笑で以て「勿論。デートだからね」と答えを返した。

孔明、愕然。

しかし今日はデートをしなければならないのだから仕方あるまいと、腹をくくった孔明はその手に自らの手を載せた。
するとすぐに思っていたよりも数倍逞しい力が一息に孔明を馬の上まで引き上げた。
「ぁ‥!」
あまり急なことだったので、横乗りで馬に乗せられた孔明は少し態勢を崩してしまった。危ないと思った孔明は反射的に傍にあるものにギュッとしがみついた。落ちなかった、と安心したところで漸く孔明は気付いた。

しがみついた先は周瑜の胸板だったということに。

「孔明‥‥!」
「あ‥、あの、違います!落ちそうだったからしがみついてしまっただけで、他意はありません!」
孔明は恥ずかしさで顔を真っ赤に染めて必死に事故であったことを主張するものの、周瑜はといえばうんうんと頷いたかと思えば、

「わかってるよ、孔明。それがツンデレというものだからね。ただ今日のデートではもっと素直になるんだよ」

と、興奮からか頬を上気させ、熱い視線を孔明に送っている。その瞬間孔明の背筋にぞわぞわと、毛虫でも這い上るような気色悪い悪寒が走った。

(………私は、今日一日を生き抜くことができるのだろうか)

孔明が心の内でそう思っていると周瑜の「では行こうか」という明るい声が聞こえてきた。しかし孔明はまだ横座り、つまりは女乗りのままである。孔明は必死になって普通に乗らせてほしいと頼み込み、やっとの思いで普通の乗り方で馬に乗ることができた(周瑜が相当残念そうな顔をしたことは悪い冗談だったと思うことにする)。
後ろに乗る周瑜が妙に身体を密着させようとしてくるが、聞いたところでまた同じ耳障りな言葉が返ってくるはずなのであえて聞かないところは孔明の学習能力の高さを示すものである。
「あの、この後何処へ?」
かわりに孔明はそう聞いた。振り向いた先の周瑜の顔は思った通りのとびきりの笑顔。
「まずはこのまま散歩かな。そうしたら今度は市街まで行ってみよう」
「その後は?」
「その後は、『お楽しみ』だよ」
孔明に沈黙が走る。カポッカポッという馬の足音だけが静まりかえった辺りにやたらと響き渡る。そして孔明は己が胸に固く、あるひとつのことを誓った。


―――『お楽しみ』の前にデートを終わらせよう!


固く固く胸に誓い、正面を見据える孔明の顔は青ざめるどころかいっそ紙のように真っ白だった。


それから数刻。日はまさに地平の彼方に吸い込まれようとしていた。

馬に乗ってから今までの間、予告通りまず散歩といって野原を二人乗りのまま馬で散策した。ある時周瑜が馬から降りたと思ったら「君に似合うと思ったんだ」と花弁の色鮮やかな白の華を一輪手折ってそれを孔明の髪に挿したりした。少しでも周瑜に気があるならほんのり頬を染めてはにかみながら「ありがとうございます」と言うべき所だろうが、残念ながら孔明にそのケは無い。しかし孔明が「手折られては花が可哀想でしょう」と言えば周瑜は「君を彩れるなら華も本望だったろう」と返す始末。そして「華を可哀想という気持ちがあるのなら最期に、君に飾られたという思い出を残してあげるべきなんじゃないかな」と筋道立てて孔明に詰めより、終日その髪に華を飾らせてきた。そのまま市街に入った時は孔明は何の拷問かと思い、善良な民の視線が恥ずかしくて、それから逃れようと周瑜の陰に隠れた。もっとも、華を隠すために周瑜にすがりつくようにその身体を寄り添わせた行為がいかに周瑜の心を喜ばせたかは天才軍師も預かりしらぬ所だったらしい。

その後市街でも周瑜はさらに孔明の言を詰まらせるような事を行なった。例えば「デートの時の手はこういう繋ぎ方をするのがルールだよ」と言って指と指を絡めるような握り方を提示してきたり、孔明の頬に肉まんの食べかすが付いてしまった時に「肉まんが付いているよ」と言って指ではなく舌で舐め取ったり、ひとつのコップに二人用のハート型のストローを挿したり、「左手の薬指のサイズは何号だい?」と聞いてきたり、孔明はもう疲労困憊である。

そして今まさに夕陽が家々の雑踏に落ち込み、消え無くなった。赤色だった辺りが一気に星の瞬く藍の世界へと景色を変えた。



「そもそもどうしてデートなんてするんですか?」と『デート』の語義を問うた後の孔明は月英に聞いた。間髪いれず月英は実に明快に答えを出した。

「一発ヤリたいからです」

キッパリと、非常にはっきりとしたその物言いに、孔明は一瞬何が言いたいのかわからなかったが徐々にその意味を理解し、理解したら理解したで急に頬に熱が上っていった。
「……私は男なんですが…。ヒゲもありますし、」
「そんなこと関係無いのでしょう」
それに男同士でもきちんと成り立つそうですよ。と具体的な部位の名称を出してさらに話出そうとした月英を必死で止めて、このことは忘れてしまおうと思った。



が、孔明はその話を思い出さずにはいられなかった。昼間に聞いた今日の日程、散歩→市街→『お楽しみ』。日が沈み、まともな店は門を閉め、残っているのは飲み屋とかイカガワシイ店ばかり。『お楽しみ』が何を指しているかは明白で、何とかしてデートを終わりにせねばと孔明は、周瑜が市街散策の間預けていた馬を取りにいっている隙に、その優秀すぎる頭脳をフルに稼働させ『お楽しみ』を回避する算段を立てた。間もなく周瑜が馬に乗って現れ、昼間のように孔明を馬上に引き上げようとした。


「では帰ろうか、孔明」


差し出された手を見ながら孔明はその言葉に呆気にとられた。
「………帰るのですか?」
あっさり帰るなんて言い出した場合なんて孔明はこれっぽちも考えていなかった。きっと何か昼間みたいに色々こじつけでもしてどうにか『お楽しみ』に持ち込もうとするのだろうと思っていた。
そんな孔明を見た周瑜は頬に嬉しさを表した。
「…ひょっとしてまだ帰りたくないとか?」
「そんなことはありません!」

何故だろうと孔明は不思議に思った。何故わざわざ帰るのかと聞いたのか。わざわざ聞き返すことなく、そのまま「はい」とでも言って後は黙っていればそれで済んだろうに、何故聞き返したのだろう。
「では、帰ろう」
朝のように自分よりも少し大きな周瑜の手のひらに自分のそれを乗せると、昼間と変わらぬ強い力が孔明の身体を馬上に引き上げた。また乗った瞬間は横乗りだったが、今度は朝の時と違い落ちそうになることはなかった。
「寒くないかい?」
態勢を普通に乗るように変え終えた孔明に周瑜は聞いた。
「大丈夫です」
「そうか。ではゆっくり帰ろうか」
二人を乗せた馬がゆるゆると歩き出した。家々は門を閉じ、空には満天の星が輝き、二人の進む道を仄かに照らしている。
「今日は楽しかったかい?孔明」
ふいに周瑜がそう聞いてきた。
孔明が振り向くと口元に微笑を湛えた周瑜がいた。


「――――はい。」


自然と孔明の口からそんな言葉が溢れた。口に出てから、自分は何て返事をしたのかと孔明はひどく驚いた。嫌々連れて行かれたはずなのに、何故不思議とあんな返事が出てしまったのか。本心は今日が楽しかったというのだろうか。
それを聞いた周瑜は微笑みをすっかりにこにことした笑みにして「それはよかった」と言った。


ふたりの馬はそのまま朝に二人が待ち合わせをした城門の脇まで行った。周瑜は先に降りると孔明のために手を差しのべた。実は昼間も周瑜は孔明が馬から降りる時に手を差しのべた。ただその時の孔明は「ひとりで降りられます」と言ってその手を取ることなく降りたのだ。

しかし今度は、孔明自身もどうしてかわからないがまた手を取ることなく一人で降りるのを躊躇してしまった。何故なのだろうか。別に周りが暗いからとかそういうことではないだろう。星のおかげで空は夜の割には明るい。昼と同じくひとりで降りられると言おうと思うと何かが胸に詰まる感じがしてそれを言わせようとしない。
意を決した孔明はその手を、周瑜の手のひらに重ねた。手は孔明が困らない程度に軽くその手を握ってきた。
孔明がその手を頼りに馬から降りると目の前には当然ながら周瑜がいた。朝もこの場で同じ人を見たはずなのに、どうして今はこうも心の内が、朝の不安とは違う何かでざわついているのだろう。
「今日は私も楽しかったよ、孔明」
周瑜がそう告げた。顔は笑顔だが、瞳にうすらと淋しさがかいま見える。周瑜が言ったのは一日の終わりの言葉。

デートは終わったのだ。


「――――公瑾、」


何かに突き動かされるように孔明の唇が動いた。その言葉は今朝はひどく言いづらかったのだが、今日一日のせいで妙に呼びやすくなってしまった言葉。字を呼ばれた周瑜が「何だい?」と昼間と変わらぬ優しい声で孔明に聞き返した。その声に誘われるように「『お楽しみ』はしないのですか?」と聞こうとしていたこと気付き、孔明はひどくうろたえた。まるで『お楽しみ』を心待ちにしているようなその聞き方。何故そんなことを聞こうとしてしまったのか。
「あぁ、『お楽しみ』がまだだったね」
孔明の心を読んだかのように周瑜はそう言った。そしておもむろに雪のように白い孔明の頬に手を添えるとそのまま目を閉じ、桃の華のように可憐な唇に自らのそれを重ねた。触れるだけの口づけ。時間として流れたのはほんの短い一瞬だったが、孔明にはその一瞬が妙に長く感じられた。


「―――おやすみ。孔明」


名残惜しそうに周瑜は頬から手を離した。その手にはまだ孔明の温もりがしっかり残っているのだろう。


「…おやすみなさい」


そう呟く孔明の頬にも先程の周瑜の手の温もりがまだほんのりと残っていた。


こうして二人のデートは終わった。




後日。


「孔明!この間の婚約指輪が出来たぞ!」
柔らかな光がほどよい明るさと暖かさを与える孔明に私室に、周瑜はそんな物言いをしながら嬉々として駆け込んできた。言っている通りその手には箱が握られていて、跪いて「孔明、私のお嫁さんになってくれ。世界で一番幸せにするから」と言うと箱を開いて先日のデートの時作ってきた、左手の薬指用の指輪を出してきた。
それを見た孔明は細い眉を曇らせて一言。
「要りません。」
「そんな連れないことを言わないでくれ!この間デートに行ったほどの仲じゃないか!」
「あれは酒の席での約束を実行しただけです。デートではありません。いうなればデート『ごっこ』です」
そんな孔明の返答を聞き、周瑜は少なからずシュンとした。デートの日の夜はかなり手応えがあったのに、何も変わっていないようである。
しかし周瑜はそんなことではちっともめげない男なので「でもこの指輪は君が持っていてくれ。君のものなのだから」と押して、どうにか孔明に指輪を渡すことに成功した。
と、周瑜はふいに今まで孔明の室で見たことがないものが置いてあるのに気付いた。
「孔明、それは何だい?」
周瑜の指差したのは部屋の隅に置いてある、石。それも結構重たそうな。下には何か平たいものが積んである。
「………ちょっと押し花を作っているんです」
頬をほんのり赤らめながらそう答える孔明に、押し花なんか作るのかと少し意外に思っていたその瞬間、周瑜はまさかの可能性に気付いた。これは聞くより他にあるまいと、にやけそうになる頬を必死に引き締め、問いて曰く。

「そういえばあの日、私があげた華は枯れてしまったのかい?」

すると思った通り、孔明は先程まで軽く色づく程度だった頬を恥ずかしさからかあっという間にりんごのように真っ赤に染め上げた。
「花瓶に挿すくらいではもう限界だろうからね。まァ押し花にするというなら話は別だけど」
孔明が口ではあんなことを言うものの、本心ではそこまで自分のことを想い、あの日の思い出を大切にしてくれているのかと思うと周瑜はもうにやけが止まらない。
にやにやしながら孔明に熱い視線を送っていると耳まで真っ赤になった孔明から「周瑜殿のバカ!」という罵声が飛んできた。 しかし周瑜にはそれが本心とは裏腹であるとよぉくわかっている。
結婚指輪も早めに作っておこうかと周瑜は心の内に決心するのであった。





《終》





マサヤ様より29000打キリリクでした。何でもイイ!と言われたので「これは都督でいかねば!」と都督でやりたい放題やってきました(笑)
都督が本気だしたらこんな感じって感を全面に押し出した感じです。普段は司馬とか太子とか邪魔者がいるからここまでできないけど、二人きりだったらこんだけやります(笑)。でも恋人だったらここからさらにエスカレートするんじゃないかと思います。少なくともお姫様だっこは(以下略)
あ、あと都督だってやるときゃやるんですよと(笑)

諸葛さんもご苦労様です‥と最初は思うかもしれませんが結局のところ両想いだったのに気付いただけなんで何の心配もないです。

月英さん…実はいるんですよ、あの国。漢の中の漢でしたね(笑)

最後の頃を打ってて「この時代に押し花?」とも思ったんですが、まァよしとしようと(よくない)

そしてやはりタイトルのセンスの無さ(激震)

最後になりましたがマサヤ様!29000打キリバンおめでとうございます(o・v・o)
こんなんでやったら貰ってください。

あ!苦情もじゃんじゃん受け付けております(笑)

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