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ありがとう

徐孔前提の趙孔です。前提というか、徐孔ありーの、そこからの趙孔です。でもメインは徐孔なんでカテゴリーはこっちです。孔明がビックリするくらいヲトメですのでご注意を。




「ねぇ徐兄。どうして、シてくれないんですか?」
「……いいか孔明。そういうことは、本当に好きな奴が出来た時までとっておくもんなんだ」
「私、徐兄のこと本当に大好きですよ」
「…まあ、あともう何年か経ったらわかるさ。だから、今はここまでだ」

そう言うと徐庶は、その大きな手でくしゃくしゃと孔明の頭を撫でた。
温かな手のひらと、此方を見下ろす柔らかな瞳を感じると、こんなに自分は好いているのにどうしても口付けから先には進んでくれない徐庶のことを、恨めしくさえ思ってしまった。



《ありがとう》



ふと目を開くと、まだ夜の帳は下りたままであった。聞こえるのは虫の声と、隣で自分を抱くように眠る恋人の寝息だけ。夜目にもわかる日に焼けた端正な顔立ち。目を閉じていると、存外その睫毛が長いこともわかる。額にかかっていた髪を除けても何も反応は無い。戦に出ている時は、此方が起きただけで目を覚ますくらいなのに。さすがに平時はこの一身是胆の男もぐっすりと眠るのかと思うと、なんだかおかしくなってきた。

(それにしても懐かしい夢を見たものですね…)

夢、というよりも過去の思い出である。目の前で眠る男と知りあうよりも、恋に落ちるよりも、ずっと昔の出来事。




ざんばらの髪に無精髭。いつも温かな眼差しで自分を見守っていてくれた。兄のように慕っていたその人。いつしか抑えきれない気持ちがこの心の中で渦巻くようになって、とうとう「好きです」と告白した。お付き合いしてくださいとも告げた。するとその人は至極あっさり「いいよ」と答えたのだ。一世一代の初めての本気の告白が、たった一言で片づけられてしまってだいぶ拍子抜けしたが、それよりも、受け入れてもらえて嬉しいという気持ちの方が勝った。好いた相手と心が通じ合えた、それが嬉しくて嬉しくて。感情に任せてその広い胸に飛び込むと、逞しい腕が背を包んでくれた。触れ合った部分が驚くほど熱くて。触れ合っているということが、幸せだった。

ふとした時に、大きな手に触れてみた。するとすぐに、その手が此方の手を握り返してくれた。想像していたよりも随分熱を持った手に思わずドキリとして其方を見遣ると、優しげな瞳が此方を見ていて、つい頬が熱くなってしまった。そんな様子を見て「いつもすましてるのに、そんな顔もするんだな」と笑われたのを覚えている。


そんな子どものままごとのような関係がしばらく続いて、ようやく口付けを交わすようになった。ただ口付けといっても、触れるだけの軽いものばかりで。それに満足できず、一度だけ、此方から半ば無理やり口付けて舌を絡めにいったことがあったが。いざ深い口付けで応えられたら、唇が離れた後、すっかり腰から力が抜けてしまってへなへなとその場に座り込んでしまった。「やっぱり、いつもみたいにするか?」と聞かれ、それからはまた唇同士で触れるだけの口付けに戻った。ただ、触れるだけの口付けでも、十分幸せな気分になれた。


深い口付けは苦手だったけど、それでも今度はもう一歩先に踏みこんでみたいと思った。その人のことを全部知りたかったし、自分も好いた相手のことを全部受け入れたいと思ったから。でも触れるだけの口付けから先には、どうしても進んでくれなかった。

「ねぇ徐兄。どうして、シてくれないんですか?」

ある日、とうとうその本心を聞いてみた。どうして好いている者同士なのに肌を重ねようとしないのですか、と。

「……いいか孔明。そういうことは、本当に好きな奴が出来た時までとっておくもんなんだ」

そう答える温かな眼差しは、でもどこか寂しそうに見えて。

「私、徐兄のこと本当に大好きですよ」

「…まあ、あともう何年か経ったらわかるさ。だから、今はここまでだ」

此方は必死で告げたというのに、それなのに、なんだか適当にあしらわれてるような感じがしてムッとした。でも、その大きな手でくしゃくしゃと頭を撫でられればそれだけで幸せだと思ってしまえた。まるで此方ばかりが一方的に慕っているようで、悔しい気がしないでもなかったが、それでも。悔しくなるくらいこの人が好きだった。



そしてその日がやってきた。あの人はいつもと変わらぬひょうひょうとした足取りで庵に現れた。常と変らぬ穏やかな、幸せな時間を二人で過ごしていたが、空が夕闇に包まれ始めた頃。

「仕官することになった」

後ろから包むように、抱きしめられながら告げられた。誰に、とは聞かない。今、この襄陽でこの人が仕官するとしたら、新野にいるあの人しかいないだろうと思ったからだ。仕官したらもうしばらくはここに来られないだろうな、と言う声音は、いつも通り穏やかなもので。こんな時くらいもっと心乱れてもいいものではないかと、此方の方ばかり心がざわついてしまって。
振り向いて正面から抱きしめる。広い胸に顔を押しつければ、大好きな人の匂いをいっぱいに感じられた。忘れたくない、忘れさせないでほしい。だから最後にもう一度「抱いてほしい」とお願いした。しかし、こんな時でも、その大きな手は頭をくしゃくしゃと撫でるだけだった。

「次に会う時までに、その気持ちをちゃんと整理しておけ。それでも、やっぱり抱いてほしいって思うんだったら、その時はしっかり応えてやるから」

気持ちを整理しておけだなんて、どういうことなのか。どうしてこの人はいつもこんなに、温かな瞳で、余裕があるんだろう。泣くな泣くな、と、いつの間にか溢れていた涙を武骨な指がぬぐってくれて。そして最後に、触れるだけの口付けでお別れをした。




「――――眠らないんですか?」
突然降りかかった声に、半ばぼうっとしていた孔明はびくりと身体を震わせた。寝ていると思われた恋人が、優しげな瞳で此方を見つめていた。寝ていたんじゃないんですか?と聞くと、貴方が起きた時くらいからずっと起きてますよ、と言う。

「たぬき寝入りしてたっていうんですか。起きてるって言ってくれればいいのに…」
「いえ、何か真剣に考え事をしているようだったので、話しかけては邪魔かと思いまして」

真剣に考え事と言われて思わず吹いてしまった。そんな顔してましたか?と問うと、生真面目なこの男は、はいと答えた。何を考えていたのですか?と続けて聞いてくる相手に対して、素直に「徐兄のことを思い出してました」と教えてやると、ムッと眉を寄せてきた。

「いけませんね。恋人の腕の中で、前の恋人のことを考えるなんて」

徐庶の名前を出したら目に見えて趙雲の機嫌が悪くなった。恋人のこんな様を見ていると、あの人もこのくらい素直に感情を出してくれればよかったのに、と思ってしまう。


「徐兄は、恋人ではありませんでしたよ」


そう、今ならわかる。徐庶と別れて、趙雲と出会って、似ているけれど少しだけ違うこの気持ちに気が付けた。「気持ちを整理して」と言った徐庶は、きっとその違いを知っていたのだろう。だから決して抱こうとはしなかったのだ。


今、あの人は何をしているのだろう。もし、また会うことができたなら、どうしても伝えたい事がある。


ありがとう、と。




《終》



6エンパで徐庶参戦と聞いたらもう我慢できなくなりまして、まだ「徐元直だ。えっと…(以下略)」くらいのキャラ性しかわかってないのにやってしまいました。一人称すら不明だっていうのにです。わかってます、夢見過ぎてるのはわかってます。でも徐庶参戦って聞いたらもうやるしかななかったんです!徐庶ですよ!孔明の兄弟子ですよ!お兄ちゃん的ポジションですよ!そら孔明甘えさせたくなりますってもんです!イメージ的には孔明の方が徐庶より5コくらい年下のつもりで打ってました!結果、孔明がかなり幼いイメージになってしまったような感じもしますが、とりあえず私は満足です!徐庶にベッタベタ甘える孔明が見たかったんです!男前な徐庶が見たかったんです!そしてなんかゴメンねチョン様!←

こんな端っこの方までわざわざ目を通してくださってありがとうございました!

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