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スウィート・デイズ

現パロ設定馬孔です。きっと社会人。お二人は一緒に暮らしてるようです。例によってほのぼのいちゃいちゃえろなしです。短いですよ




孔明は、およそその繊細な手に似つかわしくないほど料理がへたくそである。りんごを剥けば一センチほどで皮が落ち、じゃがいもの芽を取れば食べる部分がなくなるほど小さくしてしまう。一緒に住むようになってすぐ、馬超は可愛い恋人の手料理が食べてみたいとねだってみたことがあった。すると孔明はその日の夕飯に専門店と見まごうばかりのきらびやかな料理を供してきた。が、一口それを口にしてみるや何のえぐみか、何の焦げか、一体何を入れたらこんな味になるのか想像が付かないような強烈な味のパンチが馬超を襲った。どこも焦げているようにも見えなかったのに、どうしたらこうなったのか全く不明であった。


つまり言いたいことは、孔明は驚くほど料理がへたくそだということである。およそ食品サンプルでも作っていた方が似つかわしいだろう(現に休日に時たまそのようなものを工作している時もある)。


その結果、二人の食事を作るのは馬超の仕事になった。幸い馬超の方は、見た目に反して存外器用で、りんごの皮も繋げたままにささっと剥けるし、じゃがいももほとんど自然の形を残したままに剥くことができた。
ただ、この現実に馬超は、


(俺の思っていた、恋人の手料理を毎日食べたいというのは高望みだったのだろうか?)


と自問が絶えない。




《スウィート・デイズ》




そんなある日のこと。この日も馬超は磨きあげられたリビングキッチンで包丁を振るっていた。昼食は終わり、片付けも終わった。愛する孔明はソファで午睡を貪っている。食べてすぐ寝ると太る、と世間では囁かれているが、その法則はこのしなやかな身体を持った恋人には当てはまらないようだ。

すっかり片付いたところに新たな道具を広げる。ボウルに量りに木べら。すやすやと寝息をたてる可愛い顔を遠目で眺めて、電動ミキサーはやめて泡立て器を取りだす。
馬超はボウルにマーガリンを入れると、クリーム状になるまで黙々と泡立て器を振るった。





何時になっただろうか、頬に感じる温かな感触で孔明は目を覚ました。重い瞼を持ち上げると、覆いかぶさるようにして此方を見つめる鳶色の瞳の恋人と目が合った。
「起きたか?」
「ん……、何か用ですか?」
「菓子ができた」
言われて首を巡らせるとテーブルの上いっぱいに広がった菓子が目に入った。鼻にはぷんとした甘い匂いが漂う。立ちあがってそばまで見にいくと、タルトにクッキー、パウンドケーキにマフィンなど二人で食べるにはおよそ作りすぎとしか思えないような量の菓子が並んでいた。

「お菓子屋さんでも始める気ですか?」

孔明が呆れたような声を上げる。珍しい孔明の冗談に馬超はせっかくだから「それもいいかもな」とちょっとその冗談に乗ってやったのだが、「貴方みたいないかつい人が接客業なんかできるわけないでしょう」と半ば本気で怒られた。しかしそう言った後、孔明ははっとした顔で「いや、でもひょっとしたら、女子高生あたりの口コミで評判になれるかもしれませんね。孟起、結構顔は整っていますし…」なんて失礼なことを呟きだした(少なくとも馬超自身、自分の顔を散らかっていると思ったことは一度とてない)。

「万が一お店を出す時は私が接客を担当すれば間違いはないでしょうね。」

貴方は焼き上がり時間に一瞬だけキッチンから顔を出せばいいわけです、その『一瞬しか見られない』というレアリティが逆にお客に評判になるはずです、と冗談から始まった割には孔明の言はなかなか本気を帯びてきた。


しかし馬超は考える。孔明が気にかけるのは此方のことばかりで、自分の事はまるで勘定にいれていない。透けるような白い肌、夜よりも黒い艶やかな髪、桃の花弁のように愛らしい唇に、吸い込まれそうなほど澄んだ瞳。しかも口を開けば水面を撫でるような心地良い穏やかな声音が響くとなると、明らかに評判になるのは馬超よりも孔明だろう。こんな見通しを立てるくらいだから孔明の方は、恋人が他人からちやほやされても何ら支障はないのだろうが、馬超は違う。拙い想像力で考えてみたが、孔明が複数の人間、女からも男からももてはやされるというのはどうにも我慢がならない(これは自分の心が狭いというよりは孔明が無頓着すぎるのだと思う)。


「店なんか出さないから安心しろ。……当分、お前にしか菓子は作らん」


後半のセリフはだいぶ頑張ったと思うのだが孔明は「そうですか、もったいない」とまるでつれないから面白くない。
「それよりもこの大量のお菓子をどうするんですか?」
こんなに食べたらさすがに私も太りますよ、と孔明は形の良い眉をひそめながらもタルトを早速手に取り口に運んでいる。「おいしい」と口元を綻ばせる様を好ましく思いながら、馬超はそのしなやかな身体を後ろから優しく抱きしめた。


「食べたら運動すればいいだろう?」


二人、ベッドで。と囁いてやれば、流石にこの意味には気付いたのか頬を真っ赤にして此方を振り向いてきた。そのまま唇を重ねると、甘いクリームの味が口に広がった。菓子を食べるよりも、運動の方が先になりそうだ。



《終》




えろの雰囲気を漂わせながら本番には持ち込まれないことで定評のある馬孔も四本目です。相変わらず閨の様子は見せてくれません←
交地にむけて徐孔えろ原稿をやらなくちゃいけないのに、急にほのぼのいちゃいちゃしたものが見たくなって自家発電してみました。しかし料理が全くできない孔明はイイとして、お菓子作る馬超さんってどうなんでしょうね。そういえば大量のお菓子をどうするかで孔明に「馬岱殿でも呼びますか?」って言わせようとしたのですが、「おいしい」になってしまったら若の勢いに全部持って行かれてしまいました(震)
あと余談ですが、万が一あんなお菓子屋が誕生しようもんならホモォ的な感じで口コミが広まることと思います(酷ェ)

なんだかいつにもましてとりとめのないあとがきになってしまいましたが、こんなところまで読んでくださってありがとうございました。

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