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『きっと桃太郎』(交地21新刊)本文サンプル

交地21新刊『きっと桃太郎』本文サンプルです。孔明総受け桃太郎パロですが、サンプルには孔明出てません。




今は昔。とある国、桑の木のたいそう立派なある村に三人の義兄弟が住んでおりました。一番上が、草鞋を編むのが得意な劉備。一番下が、虎髭が立派な大酒飲みの張飛。間に挟まれ次男が赤ら顔のキューティクル長髭、関羽。いつか世が乱れた時、例えば甲子の年が来た時には一旗揚げてやろうと思っている三人です。しかし未だイエローターバンの嵐が吹き荒れるでもなく、世は蒼天生き生きとしていましたので、仕方なくぼちぼち生計を立てておりました。



そんなある日のことです。いつも通り、張飛は街中へ肉を売りに、関羽は村の子どもに読み書きを教えておりました。さて劉備も、今日も元気に筵を売りに……と思ったら、今日は村から離れた大河の畔まで来ているではありませんか。
たまには義弟たちに茶でも飲ませてやりたい。



そんな兄貴心のために、劉備は茶を運ぶ船が通りかかるのを今か今かと待っているのです。決して筵売りをサボっているわけではありません。



 



さて劉備が行商の船を待ちはじめて程なく、上流の方から川の流れに身をまかせ、どんぶらこっこどんぶらこっこと異様な物が流れてくるではありませんか。目を凝らしてよく見てみると、それは一つの桃のようです。ただ、遠目にも明らかに巨大です。どう見ても大の大人の背丈ほどはありそうです。生まれて劉備もうん十うん年。あんな大きな桃は見たことがありません。



「おお!あれほどに大きな桃ならば、雲長と翼徳と腹いっぱいに食べられそうだ!」



身体の大きさに比例するように、義弟二人は大変よく食べるので、並の量では間に合わないのです。しかしこの大きさならば!劉備の心はときめきました。大味かもしれないけどそんなの義弟たちには関係ないでしょう。



が。その時。



未だはるか上流にある桃が、突如として光を放ち始めたのです。それもなんと桃の内側から桃の割れ目に沿って、まるで光が桃を割るかのように、というか割れました!桃、自ら割れました!なんということでしょう川面でいきなり桃が自然に割れました!しかし自然に桃が内から光を放ちながら割れることなんてあるのでしょうか?



混乱する劉備の疑問はしかしすぐに解決されるのでした。見事真っ二つに割れた桃の中から、なんと立派な青年が飛び出てきたのです。おそらくあの桃は内側からあの青年に切られてしまったのでしょう。その証拠とでもいうように、白銀の鎧に身を包んだ青年の手には見事な龍槍が握られています。



文字通り空中高く舞い上がって登場した青年を劉備が唖然呆然口をあんぐりと開けて見ていると、ふいに青年がこちらをきりりとした、まるで射すような眼差しで見つめてきました。見つめられて劉備がどきりとしていると、あろうことかその青年、水面に降り立つやなんとそのまま水面を猛スピードで走ってこちらに近付いてくるではありませんか!さながら5のオープニングムービーです。しかし劉備の心境は、



よく分からないが怖い!!



むしろよく分からないからこそ怖いというものです。気が付いた時には劉備も、5の時「長坂の劉備追いつけない」と噂された俊足でもって全速力で青年から逃げ出していたのです。



川の畔から郊外、街を抜け、一目散に劉備は家に逃げ戻りました。



「おう兄者、そんな血相変えてどうした?腹でも痛えのか?」



先に帰っていた張飛は、劉備にそんなことを聞きました。息も切れ切れ全力で走ってきた劉備はそんな話に応えてあげる余裕もありません。がしかし、頼もしい義弟と合流できてようやくホッと一息つけました。



実はな翼徳、川の畔で大きな桃が……今しがたの信じ難い事実を劉備が義弟に告げようとすると、なんとその時。



「劉備殿ーーーー!!!」



よく通る声と共に劉備の背後の扉が、メキメキバリーンと派手に音をたててぶち抜かれました。飛び込んで来たのはご期待の通り、先ほど桃から出てきた青年です。



おうなんだテメェは、人んちの扉ぶっ壊しやがって、やろうってのか?!と、虎鬚を奮わせ張飛はいきり立ちます。しかし青年はそれに動じることもなく、髪に飛び散った扉の破片もそのままに劉備の前に膝まづきました。



「私は、桃から生まれた桃太郎こと趙子竜と申します。我が故郷常山まで鳴り響く劉備殿の大徳に仕えんと、はるばる桃に入ってやって参りました次第です。数々の非礼につきましては、ここでお詫び申し上げます」



青年のなんと爽やかなことでしょう。その惚れ惚れとするような様を見ていると、桃から生まれたのに故郷が常山とはこれ如何にとか、未だ村で筵編んでいただけなのに鳴り響く大徳って何とか、そんなツッコミも消えてしまいます。



「もしお許しがいただけるのであればこの趙雲、劉備殿に粉骨砕身してお仕えする所存でございます」



「おお!そなた程の将がこの玄徳の元にいてくれるとは、これほど喜ばしいことはないぞ!」



劉備は、拱手する趙雲の手を取り立ち上がらせました。



「さあ翼徳、今日は仲間が増えた嬉しい宴だ!とびきりの肉を用意してくれ!」



「おう!よしきた任せろ!一っ番上等な肉を用意してやるぜ!」



こうして桃から生まれた桃太郎こと趙雲は、劉備たち三義兄弟としばらくの間共に暮らしていたのでした。

《続》

表紙の一部はこの法正↓



最終的にこんな表紙になりました↓



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