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交地19新刊『サマー』の本文サンプルです。三十六計4新刊『スプリング』の設定で周孔です。
(全く、面倒な仕事を引き受けてしまったものだ……)
真夏の風物詩蝉の大合唱も遮られる、クーラーを効かせた大教室。その隅で周瑜は溜め息をついた。
夏八月。休みは始まったばかりだが、大学の夏といえば大きなイベントが一つある。期待に夢膨らませる若人に向けて開かれる一大イベント・オープンキャンパスである。夏以外の季節にもちまちまと行われているのだが、やはり高校生が休みになる夏のオープンキャンパスが最も忙しく、かつ大規模になる。
周瑜はそのオープンキャンパスに、在校生代表の一人として参加する羽目になっていた。こうなった理由は、どうもあまり自らの記憶は無いのだが、酒の席で教授に「在校生代表してくれるかなー?!」と聞かれた際、「いいともー!!」と全力で応えてしまったためらしい。飲み会での約束、しかも酔った勢いでのものなんてほじくり返さないでほしいのだが、よほど他に生徒が見つからなかったのか、こうして契約履行を迫られる羽目になったのだ。
そしていざオープンキャンパス当日。ちらりと、手元にある今日の流れを書いたメモを見る。今はまだ件の教授が模擬授業中である。私の出番はこの後か、と、周りに気付かれないように今日何度目かのため息を漏らした。
気が重いというよりは面倒くさい。「まぁそう言わず、可愛い女子高生が見に来てくれるんだぞ」とフォローしてきた教授の言葉が思い起こされる。別に女子高生に興味があるわけではないが……。興味があるわけではないが、ちらりと大教室を見回す。中央の黒板を見下ろすように階段状に設置された机は、ゆうに二百を超す数である。しかしそこに収まりきれず後ろで立ち聞きする者もちらほら。盛況だなと、何とはなしに教室を見回してみる。するとふと、ある一点に吸い寄せられるように目が止まった。
《続》
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