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『白雪姫…?』本文サンプル

太子の国メンバー中心でお送りする白雪姫パロです。しかし白雪姫パロのはずですが、途中から路線がおかしくなっていきました…。残念ながら劉備さんの出番はありません。



今は昔。とある国のとある屋敷。深紅で彩られた豪奢な造りの室内に、不釣り合いな朽ちかけた木の扉が一枚。開けば深層へと続く石造りの階段が闇に包まれている。最下層まで降り切ると、ちりちりと音を発てながら燃える燭台が、唯一薄暗い室内を明るく照らしていた。
炎に映しだされるように、緋色の衣を纏った色の白い男が一人。男の目の前には半身も映らんとする大きな鏡。火に照らされた暗い室内に、唯一の存在感を放っている。重々しくも優美な装飾の施された縁は純金でできていた。が、この鏡の価値はそんなところにあるわけではない。男の長い指が、鏡に映し出される我が身を撫でた。

「鏡よ鏡。この世で一番美しいのは誰だ?」

すると、それまで穏やかに男を映していた鏡が、風に揺られた湖面のように波紋を浮かべた。
鏡は摩訶不思議な術で作られた鏡だった。いつの世からこの屋敷にあったのかは男も知らない。ずっと昔からあったのかもしれないし、ごく最近手に入れた物かもしれない。少なくとも、その存在を認識しだしたのは極々最近だったと思う。鏡は人の言葉を解し、世のあらゆる物事に通じていた。
『鏡よ鏡。この世で一番美しいのは誰だ?』
鏡が知を持っていると知った当初も問いかけたこの言葉。この問いの答えに、我が身がその鏡面に映された快感が今でも忘れられない。そのため、男はまた同じく問いかけたのだ。この世で一番美しいのは誰だ、と。ざわめいていた鏡が鎮まった。鏡はこの世で最も美しい者の姿を映した。
「!こ、これは…!」
鏡の映した姿は、我が身とはまるで違う姿だった。流れるような緑の黒髪、つん、とした可愛らしい鼻。長い睫毛に縁取られた、吸いこまれそうなほど魅惑的な、水晶のように澄んだ瞳。雪のように白く肌理の細かい肌の上で薄く色めく唇は、思わず触れてみたい衝動を駆り立てる。三筋の髭の存在が、この人物が男であることを示しているがそんなことは問題ではない。男は、わなわなと震える手で鏡を掴んだ。

「もろ好みだ!!!」

物語は、この奇妙な出会いから始まった。





男…こと周瑜は、激しく狂喜していた。鏡の映したこの世で最も美しい人。それはまさに周瑜のストライクゾーンにど真ん中のどストライクの人物であった。一目見た瞬間、まさにズドンと雷に打たれたような衝撃を受けた。自然に頬に熱が昇り、ハァハァと息が荒くなる。これが世に言う「ひとめ惚れ」なのだろうか?
(いや、違うな)
周瑜は確信していた。これは、ひとめ惚れなんてぬるいものではない、「運命」である、と。
「この人は!い、いったいどこの誰なんだ!?」
鼻息荒く周瑜が鏡に詰め寄った瞬間に、フッと鏡が「その人」の像を消した。すると「消すなー!!」とさらに周瑜の怒気が増す。
「何!?城主の弟御だと?!」
都督の私が何故今の今までこの人を知らなかったのだー!!と、喚き散らす周瑜。
「その人」が城を訪れる事になった際、「この人を都督の前には出さない方がイイ」と、城主込みの会議で相談して決められていたという事実を、周瑜は知らない。
「名前は…、ほう、孔明というのか。綺麗な名前だ…」
頬を赤らめ、孔明という魅惑的な人とのことを妄想する。驚くほど白く透き通った肌であった。頬が色づく時は白が淡い桃色に染まって、非常に可愛らしいだろう。それにきっと、声音も穏やかで、柔らかなことだろう。その声で、「愛しています」とか「貴方と一緒になれて良かった」なんて言われてしまったら…!
ほんの少し妄想しただけで、周瑜の頬は熱を持ち、ついでに思わずニヤニヤとだらしなく緩んでしまった。

「――――よし!今すぐ城主に直談判して、結婚を了解させてやる!!」

何故だか妙に上から目線だが、胸に固い決意を誓い、周瑜は靴音高く跳ねるように石段を駆け上がった。


《続》

表紙↓

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