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とある夫婦の引越し~夜編~(メゾン・ド・漢中/現パロ) ※

『とある夫婦の引越し』の日の劉邦と張良の夜の話です。ある意味初夜。



朝早くから引越し作業に勤しんだせいか、空が朱に染まる頃には必要な物もあらかた段ボールから出し終わり、ご近所への挨拶回りも全部終わった。

冬のため、終わる頃にはもう外は宵の明星以外の星も自己主張を始めるほど真っ暗で、部屋に帰った劉邦と張良はふたり分の蕎麦を茹でて温かい麺汁に、用意しておいた蒲鉾とネギと海老の天ぷらを乗せて、コタツの一辺には張良が、隣の一辺には劉邦が座り、ふたり仲良く食べ始めた。

熱いけど美味い、とかやっぱり引越しは疲れますねとか色々談笑しているなかで張良が、

「まさか隣が韓信くんだとは本当にびっくりしましたよ」

こんな偶然ってあるんですねと感慨深げにどこか遠い目をしている。その瞳は見ようにはひどく儚げにも見えて、思わず――。


「子房」


はい?と劉邦の呼びかけで我に返った張良がそちらを見るとハッとするくらい近い距離に精悍な顔があって、


「我が君…」


そのまま唇を奪われた。


触れるだけかと思ったら舌をさしこまれ、息をするのも大変なほどに貪られ、最後にちゅっと音を発てて口づけは終わった。

ぼぉっとする頭で劉邦を見つめていると大きな手が頬を撫で、いたずらっ子のような瞳が覗きこんできて、


「少し、嫉妬した」


と呟き様、そのまま抱えあげられて寝室のベッドへ連れていかれた。


「お蕎麦、のびちゃいますよ」


もう半分ほど脱がされた張良が劉邦に言うと、今からまた食べに戻るか?と耳元で甘く意地悪に囁かれた。

「…いじわる」

思ったことをそのままに口に出すと、くすくすと笑われた。嫌そうな顔はしてないんだがな、と首筋に劉邦の口付けが落ちると張良の瞳が熱い潤みを帯びた。



劉邦は殊更に首筋を愛撫するのが好きだった。首という、生物として重要な器官を触ることは雄としての征服欲を大いに掻き立たせた。唇でなぞり、息をかけ、唾液をたっぷりに舐めあげ、食むように甘く歯をたてる。そうするとか細い声と共に首の持ち主の肌が粟立った。本当は吸い跡のひとつも残したいところだが、以前感情の赴くままに付けたらひどく怒られたのでやらない。

唇はそのままに、手は胸の飾りをいじりだした。摘まんでぐりぐり押
し込むと飾りはふっくらと自己主張をはじめ、堪らないのかすっと通った細い眉を歪め、熱の隠った息を吐いた。

「わがきみ、…ア、」

唇が胸の赤を包んだ。じゅるりと唾液をたっぷり滴らせ、ちゅ、ちゅと可愛い音をたてて吸われたら、喉の奥からはもう歓喜の悲鳴しかあげられなかった。



「子房」


ふいに名を呼ばれ我に返ると追い詰められた苦笑いのような表情を浮かべている劉邦が目に入った。劉邦は張良の白雪の手を取ると、布越しにもはっきりとわかるほど熱にたぎっているものを触らせた。


「もう限界だ」


はやく繋がりたい。と情欲の焔を湛えた瞳が訴えた。


「わたしも‥」


はやくひとつに。と熱に震える声が答えた。



逸る気持ちをうまく押さえきれないまま劉邦は自らの着衣を全て脱ぐと張良の肌にまとわりついていた衣服も全部剥ぎ取った。

「ンン‥」

張良の口に劉邦の節くれだった指が入ってきた。後孔を慣らすのに使う指は張良が濡らすというのがふたりの決まりだった。舌で指を舐める間にちゅっと卑猥な音が鳴る。

「っあん、‥」

上の口から引き抜かれた指が今度は下の口に挿れられた。ゆっくり貫いてゆき、深いところで慣れるのを待つ。その間にもナカは誘うように動いてきて、ぐりっと刺激を送れば悩ましげに腰をくねらせる。さらに指を増やせば、きゅうと切なくなるくらい強く締め付けてくる。


十分慣れたところで指を引き抜き、蕾に硬い熱棒をあてがった。当てた瞬間ひくりと張良の肩が震えた。もう何回も何回も繋がってきたが挿れる直前はいつも肩を震わせる。落ち着かせようと口付けを施すと精一杯応えてくれた。

「ん‥あ…っ!」

ゆっくり、腰を進める。無意識のうちに逃げようとする腰を押さえてゆっくりナカへと侵入する。入るそばから絡みついてくる熱い内壁に思わず溜め息が漏れる。


全て収めたところでまた唇を合わせた。唾液と舌の絡み合う音に誘われるように腰を使って張良を貪りはじめた。

「アッ‥はぁ‥っ!」

最奥の一番感じるところに熱が当たって張良が悩ましげに柳眉を寄せた。張良はどこよりも身体の奥の奥が一番感度がいい。そうなるように劉邦が仕込んだからだ。もっともっと深いところへと誘い込もうとするように劉邦のたくましい腰に滑らかな脚が絡みついた。

少しだけ引き抜いて揺するようにまた奥を満たす。先ほどよりも今度のほうが、というようにじわじわと奥へ奥へと進んでいく。すると、ひどくゆるやかな動きにも関わらず、上がる悲鳴はどんどん甘さを帯びていった。最奥を掠める瞬間首筋に噛みつくと、可愛い声を
あげて張良は達した。劉邦はまだ放っていない。


達した後の内壁の絞るような蠕動を堪能しつつ、張良が少し落ち着くのを待つと今度はその欲に濡れた身体を引き起こし、座った己に跨がるような体位にした。向かい合いながら常に最奥を貫かれるこの体位は張良の一番好きな体位だ。自らの重みで奥の奥で劉邦をくわえ込んだ歓喜に、張良は涙を流し腰をくねらせた。

「アッ、‥あぁ…わがきみッ」

熱い吐息を漏らし劉邦は先ほどの穏やかさは嘘のように勢いよく腰を動かした。ねっとりと絡みつき、全てを絞り取ろうとするような内壁を、痛いくらい食い付いて離れようとしない入り口を、そしてやわらかな唇の赤を、張良の全てを貪った。


「は、子房‥!」

「あぁっ、ん、もう、はぁ‥っ」


二度目の高みの近づきを張良は雫を溢しながら訴えた。極みが近いのは劉邦も同じで、可愛い張良の汗ふく額にひとつ口付けを落とすと、ぎりぎりまで熱を引き抜き最奥めがけて勢いよく数回熱杭をうがった。その勢いで張良は白濁を放ち、劉邦も熱い精を張良に注いだ。


二度目の吐精後、張良が荒い息を整えているとふいに再び布団に押し倒された。何かと思って劉邦を見ると欲を湛えた野性的な笑顔とぶつかった。

「子房、儂はまだまだ食いたい」

もっと、もっとだ。とまた首筋に顔を埋めてきた。正直身体はきつかったが愛されている幸せに張良は劉邦に身を委ね、この夜は一晩中彼を愛し愛された。






以下余談。

劉邦・張良夫妻の部屋の下には劉邦の昔からの知り合い・蕭何が住んでいる。ちなみにこのメゾン・ド・漢中という物件を劉邦に紹介したのもこの蕭何だ。

メゾン・ド・漢中は壁の薄い物件であるが流石に床は壁ほど酷くない。しかしそれでも彼らの激しい運動は蕭何の部屋にそれなりの被害をもたらした。流石に声は聞こえないが代わりに、恐らく彼らの動きにあわせて、天井からパラパラと埃が舞い落ちてくる。

パラパラパラパラ一晩中。

普通なら文句のひとつも言うところであろうがこの人に限ってはそうではない。

性、深淵の湖水のように穏やかなこの人は、あぁふたりともまだまだ若いなァとただそれだけ思って眠りについた。


翌朝、例の夫婦に会った時も「羨ましいですね」とか「お盛んですね」とかそんな下卑た耶兪も言わず、優しく「おはようございます」とそのあとは今日のお天気の話とか他愛のない話をしていた。




《終》




ずっと書きたかった邦良エロがようやく書けました(*´∀`*)
はじめての邦良エロですよ。ある意味初夜ですよ。

この話は『とある夫婦の引越し』の最後で韓信が聞き耳たててたあのシーンの邦良夫部屋サイドの話です。
あ、蕭何さん初登場しましたね。すんごいちょっとですけど。これからこんな風にじわじわひとが増えていく予定です。

引越しが冬だったからこの話もおのずと冬の話になりましたがアップした時のリアルな季節は夏ってのがまた…(酷)

そういえば未だに1Pをうまく切れません(ヒー)。

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