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愛別離苦(アキ孔) ※

樊孔前提アキ孔の触手裏です。珍しく暗い系のお話になっております。





月の見えない夜。部屋の灯かりは付けず机に置いたスタンドの柔らかな光だけを付け、孔明はペンを走らせた。かれこれその作戦を練り始めてからもう三日。孔明はペンを持っていない手を顎に当てた。長く整った睫毛に縁取られた瞼がまばたいた。たったひとつのミスも許されないその策に、流石の孔明も慎重に慎重を重ね、ゆっくりと反芻を繰り返す。


(策は、立った‥。)


丹朱の唇が妖しく歪んだ。
と、ふいに扉の傍に見慣れた影が見えた。いつの間に入って来たのかと孔明は思ったが元よりその人物はこの部屋を訪れる時ノックのひとつもないので大して気にかからなかった。


時折現れる混世魔王。来る度に孔明はさんざ悪態つくが、その訪れを実は待ち望んでいるという心の内は決して当人には明かさない。というかつい顔を合わせると本心が奥底に隠れてしまう。


その日もそうだと思った。樊瑞が近寄ってきて「まだ寝ていなかったのか」「ちゃんと夕食は摂ったのか」とか気遣わしげな言葉をかけてきて、邪険に扱っているうちに厚い唇で口を塞がれて、そのまま流されるように情を重ねるのだと思った。


しかし近づいて来る樊瑞に、孔明は少なからぬ違和感を覚えた。一歩一歩絨毯を踏みしめるその足取りに、近付く度に揺れるその柔らかなマントに、瞳に宿るその光に。



「――――樊瑞殿‥‥?」



違う。と思った時にはもう遅かった。樊瑞だと思ったそれは急に真っ黒な半液体状の形質に戻ると逃げる間もなく孔明の手足を拘束した。引き倒された孔明の下には絨毯ではなくその漆黒の闇が待ち構えていた。最早孔明に逃げ道は無い。


「アキレス様‥‥、何を‥‥」


誰も超えてはならない、ボスの忠実なその僕の名を孔明は呼んだ。こんなことが出来るのは世界中見回してもこの獣くらいだろう。一体何のつもりかと問うたその答えはすぐに分かった。


ぬるりと服の隙間に滑り込む冷たい物質。相手の意図を悟った瞬間、ぞわりと孔明の肌に粟が立った。


「お止め下さい‥、アキ‥、‥ンッ!」

無遠慮なそれらはあらゆる所から孔明を篭絡しにかかった。あるいは首筋をなぞり、あるいは背を撫で回し。一方は襟と袖から胸を犯し、また一方はズボンの裾から脚を這い上がり中心を包み込んだ。
「はぁ‥‥っ、」
それらは孔明の全てに同時にゆるりと快楽を与え出し、孔明は柳眉を寄せてそれに耐えた。しかし樊瑞に仕込まれ、快楽を覚えてしまった身体はその意思とは裏腹に歓喜に震えてしまう。

声を出してはいけない、と鉄のような理性が最後の砦を作る。一度声を出したらもう止まりはしないだろうという絶望的な予測は考えるまでもない。

最初はアキレスも緩やかな愛撫しかしてこなかった。しかし孔明が一向に声を漏らさない様が苛立つのか、徐々にせき立てるように孔明の際どい所を重点的に攻め立ててきた。
「ン‥ッ、ンンッ、‥」
服を全部剥ぎ取って、珠のような肌を黒の触手がまさぐった。うすら冷たいそれが内腿を撫で、背を舐め、胸の飾りを摘まんでも孔明は唇を噛み締めたままだった。
しかし白の肌は朱に染まり、柳眉は快楽に耐えるように悩ましげ寄せられ、固く閉じられた目元には薄く涙が浮かぶ。身体は確実に快楽に呑み込まれていた。
そしてここで、


「ンアッ?!ぁ‥ア、キレスさま‥、アアァッ!」


細く堅い一本の黒い触手が、孔明の固く閉じられた唇をこじ開けた。口が、冷たい無機物に支配され、もう声はこぼれるままに、堕ちていくしかなかった。

「はぁっ、‥やあ、あっ、ンッ!アッ、アッ‥あぁっ!」

一度漏れ出した声は最早止めようは無く、無数の触手の無数の愛撫に孔明の目から何か熱いものが溢れた。


そして遂に、アキレスが孔明のそこに触れた。


「ゃっ‥!そこ、は‥ッ!」


ひくり、と喉を反らせ孔明が震えた。しかし触手は構うことなく他者の侵入を固く拒む後孔へ押し入った。
「ぅ‥、くっ‥はあ‥ッ!」
細い触手が数本、孔明のナカへ侵入を果たした。一本は奥へ、一本は入り口ばかりを、一本は前立腺を擦り上げ、それぞれが孔明を犯す。その間も別の触手は素肌を、胸を、中心を暴くことも忘れない。孔明は瞳から涙を溢れさせただ啼くことしかできなかった。
「ぁっ、‥っ、もぅ‥おやめ、くだ‥っああぁ‥!」
孔明を弄るアキレスの触手が変わった。後孔に挿入されていた細い柔らかな何本もの触手がひとつにまとまり、太く堅い、男のそれのような形に変わり、容赦なく孔明の嬌声を絞りとった。
「ゃぁ、あ‥、ぃや、‥アキ‥、ひあぁッ!」
止む気配の無い突き上げに、さらに中心を弄る触手の動きも変わった。それまで包み込み、擦り上げるような動きをしてきた触手から、針のように細い一本が作られ、それが孔明の中心の窪みに侵入してきた。
「ィ‥ッ!ゃ、あ、あ‥アアァッ‥!」
止めどない涙が孔明の頬を濡らした。入り込んできた当初こそ痛かったものの、それをすぐに快感に変えてしまった自らの身体の情けなさに涙が止まらなかった。
前立腺を内と外から激しく攻め立てられあっという間に、孔明は今まで出したことのないほど大量の快楽の白濁を解放した。
孔明は自身から溢れ、腹を汚す白濁液を直視することはできなかった。涙に濡れた瞳を反らしながら「もうお止め下さい」と息も切々に懇願するも、アキレスの愛撫は止まらなかった。
達したばかりの身体をまた深い快楽に淵に引き込むべく、触手は内の前立腺をごりごりと雄芯で突き上げた。同時に胸のしこりも吸うように愛撫されれば、孔明の喉からは最早艶然とした声しか溢れてこない。
「ぁっ‥!ぁ、もう許して‥くだ、‥これ以上‥‥ンンゥッ!?」


突如、孔明の口にアキレスが侵入してきた。冷たい無機質が孔明の口を塞いだ。そして床から、執務室に備え付けられている仮眠用のベッドへと孔明を運び込んだ。


訳も分からず、抵抗もできぬままベッドに横たえられた孔明の上にさらにアキレスが、孔明を隠すように覆い被さった。

何を。と思う間もなく執務室の扉が開いた。アキレスに覆われていて目は見えないが、音だけでも分かる。


(樊瑞殿‥‥―――)


絨毯を踏みしめる靴の音、歩く度に衣と衣が擦れて聞こえる音、全てが聞き覚えのある温かい音。


「―――居らんのか?」


心地よいバリトンが耳に響いた。

樊瑞が孔明の執務室に入ると目的の人物はそこにいなかった。


怪訝に思いながら中に進んで行く。机の上には付けっぱなしのスタンドと、計画書とペンが散らかったようにおいてある。几帳面な孔明が、こんな風に机の上を乱雑に置いて何処かに出かけるだろうか。いやそもそも出かけるとしたら孔明はこんな時間に何処へ行ったというのだろうか。


寝ているのだろうかとベッドに目を向けてみてもベッドは至って綺麗なまま。


「孔明、居らんのか?」


放った声は虚しく空間に響くだけ。


「……………。」


付けっぱなしのスタンドと、散らかった計画書とペン。


腑に落ちない気持ちはあるものの、これ以上はどうしようもない。仕方なしに樊瑞はすっとしない気持ちのまま執務室を後にするしかなかった。




扉の閉まる重い音が孔明の耳に届いた。


樊瑞がいなくなるとアキレスは孔明の覆いをといた。瞳に映るのは無機質な天井。手と足は拘束され、胸も秘孔も犯されたまま。声を出さないよう口に入れられたものは抜かれ、黒い無機質が唾液で濡れた。


つう、と目の端から熱いものが頬を伝った。


孔明は、わかっていた。この弄虐から逃れることは出来ないのだと。


たとえ樊瑞が気付いたとしても、アキレスには逆らえないのだ。


「ぁっ‥、アキレスさま、…っもう…ッ!ぁ、あぁんッ‥!」


先ほどもずっとやわやわと動いていた触手がまた激しく孔明を攻め立てはじめた。


(樊瑞殿‥‥ッ!)


その晩、孔明の頬が乾くことはなかった。




翌日。
樊瑞は回廊を歩いていた。昨夜も歩いた道。しかし昨夜と違うのはその先に会いたかった人物がいたこと。


いつも白い顔をさらに青白くしてどこか虚ろな瞳で回廊を歩いている。


「孔明、」


名前を呼ぶとびくりと肩を震わせ、目をあげてきた。こんなに近くに居るのに気づいていなかったのかと樊瑞は驚いた。
「昨夜‥室へ行ったのだが、会えなんだな」
どこか怯えを含んだ孔明にできるだけ優しく話しかけた。
何処に居ったのだ?


「―――‥室に居ました」

「何‥?」

孔明の言葉と、ひび割れたその声に樊瑞は我が耳を疑った。


「室の何処に居ったというのだ?」

「‥‥ベッドに、」


そんな馬鹿な。樊瑞は思った。間違いなく自分は昨夜ベッドの上も確認をとった。しかしそこはシーツひとつ乱れた様子も無く全く綺麗なものであった。


「樊瑞殿‥」


孔明の手がすがるように樊瑞の腕に触れた。青い瞳が何かを訴えかけるに此方を見つめてくる。


おかしい、今日の孔明は。


「孔明、昨夜何があったのだ?」

何かあったのだろう?孔明。


肩を掴まえ、なるべく声を荒げないように聞いた。


言うてみよ、儂には話せなんだことか?


すると逡巡するように孔明は一度その長い睫毛を伏せるようにうつ向いた後、揺れる瞳を樊瑞に向けた。


「‥‥‥もう少し早く、」


来てほしかった。


言葉の最後はもう吐息のようだった。


「‥孔明、それはどういう‥‥」


樊瑞がそう聞きかけた瞬間、孔明の足元が黒の液体状のものに包まれた。薄い肩は小さく震えたように見えた。


「失礼いたします、」


ご機嫌よう、樊瑞殿。


その声が泣きそうな声に聞こえた。


「孔明ッ!!」


樊瑞が捕まえる前に、孔明は黒の液体に引き込まれてしまった。
回廊には床にうずくまる樊瑞だけが残された。


《終》


「アキレスさま×孔明のお話」というリクだったはずですが‥‥樊孔前提のアキ孔‥といえば聞こえはイイですがそれよりは樊孔←アキのような小話ができてしまいました。
しかも丈の書く小話には珍しい暗い系の小話で、そのせいかはわかりませんが最近では割合コンパクトな感じに仕上がりました。
ただ、言うとするなら↓

Q.何でこんな話になったんですか?
A.デキちゃったんだもの!

なんたる言いぐさ(笑)!
いやでも本当なんです。アキ孔のお話と聞いた瞬間、「樊孔前提アキ孔触手エロってオイシイ!」とビビっとキテしまったのです←
そのせいで裏指定はなかったリクだったのに裏になってしまう始末ですし。

でも今まで書いた小話の中では、「策士が魔王のこと好き」感が出たものにはなったと思います。
なのでタイトルも樊孔視点からつけてみたわけであります(ちなみに「九腸断絶」と迷ったんですが字ヅラが生々しいのでヤメました)

さて、アキ孔ってこれでよかったんでしょうか?←
ご意見、ご感想お待ちしています。

ここまでご覧いただき、ありがとうございました!

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