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樊孔やおいです。魔王が策士の部屋を訪れました。基本イチャついてるだけです。
既に22時を回った。
本来なら21時に来るはずの部下からの報告が来ない。
この男を横にして既に1時間が過ぎた。
私から少し離れた位置に腰を下ろしていた男は言った。
「もう1時間もたつ…そろそろいいだろう、孔明」
忌々しいこの男。
私を寝かし付けようとやってきたこの男はどうにかして私をベッドへと持って行きたい模様だ。
生憎私はのんびりとベッドでぬくぬくと寝るような時間の余裕は持ち合わせていない。
「いいえ、私は今少し待ちます。どうぞ樊瑞殿は先にお休み下さい」
殊更に優しく言ってやった。
すると樊瑞は眉をしかめ、言った。
「儂はお主がちゃんと寝るのを見届けるために来たのだ。お主より先に寝られるものか」
「ですが、明日の任務は早いのでしょう?」
自分が決めたことだが、わざとらしく聞いた。樊瑞は小さく声を上げて笑い、
「全てお主が決めた事であろうに、そうもわざとらしく聞くな」
と言った。
どうもこの男もまた少しも譲る気はないようだ。
この男とのやり取りにはいつも疲れてさせられる。
互いに引く気は無く、意見は常に平行線を辿る。
結局はいつも喧嘩である。
ふと、先程までそこに座っていた樊瑞が立ち上がり、此方へ近づいて来た。
そして近づくなり力任せに私の身体を抱き上げた。
背中と膝裏を両の腕で支えられ、樊瑞の胸に抱きすくめられるようになる。
「な、何をなさるのです樊瑞殿」
自分でも驚く程狼狽えた声を上げてしまった。
樊瑞はちらと視線だけ此方に向けた。
「こうなれば力づくでお主を連れて行くまでよ」
「混世魔王たるものが、意見が通らねば最後はただ力づくですか」
「そう言ってくれるな。口喧嘩でお主に勝てる気はせん」
そう言うとコツコツと音を立てながら私の寝室へと向かって行った。
ああ、忌々しいこの男。
けれども触れ合う体温は不思議と心地良く、疲労の溜まった身体の眠気を誘った。
この男の腕の中で眠るなんて、普段なら全く以て有り得ないことである。が、今日だけは、不思議と今日だけは、この心地良さに全て委せてしまっても良いかと思えた。
「樊瑞殿…‥」
「しゃべるな。そのまま寝てしまえ」
強く、そう言われた。
そのまま、私はこの男の腕の中で意識を手放した。
《終》
初小話です。策士はやっぱりツンデレですね。ちょっとツンツンしすぎた感もあるけどι
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